東京新宿区・K邸

1.敷地

新宿区にある赤城神社近くの建設地は細い路地の奥にあり、その建て替え前の様子。平屋の家にはレトロな雰囲気もあり、幾つかの材料を取り外して使うことにした。敷地を二分割して半分になっているので間口が狭く奥行きが深い、変形の敷地。左奥に夏ミカンの樹があり、とても沢山実を付ける。この樹を残す事が当初からの条件になった。

2.外観模型

基本設計案の模型写真。密集地における周辺環境に対応して快適な空間を作るため、上から見ると十字型をしているのが全体計画のコンセプト。それに加え2階にある広間と離れの組合せがポイント。左側が南だが直ぐそばまで隣家が建っている。

3.十字プランの原型

この計画案のコンセプトは、「東京ハウス」のアイデアを発展させたもの。「東京ハウス」は数年前におこなわれた「都民の家」設計コンペで最優秀賞に選ばれた作品。上から見ると「ト」の字をしたプラン。開口部の配置は隣地に接していない壁に設けてプライバシーと環境と構造の調和を見いだすアイデア。

4.基礎工事

基礎工事の様子。奥行き方向に長い十字の形が少し判るかと思う。地盤対策としてベタ基礎を採用。

5.上棟

上棟時の様子。Rの屋根は写真のように棟木を増やして形作った。在来工法のプレカット材使用。

6.広間の梁

2階の中心である広間は梁を現した傾斜天井の大空間で3間×3間の大きさ。この部分の軸組と屋根をどのようにするのかをいろいろと考えた。梁はツーバイフォーで用いる30cmくらいある梁で水平剛性や風の作用などを考えて、一部補強金物を制作してもらった。

7.完成外観

扇のデザインの正面外観。ポイントカラーは薄紫にした。色としては難しい色なので、正直どのような感じになるのかシートをはずすまで不安もあったが、思い通りのイメージで良かった。その足下あたりは旧家屋の瓦を活用して外構デザインをおこなった。
路地全体がが明るい感じになった気がした。

8.広間(1)

広間の全体を見たところ。3間×3間の正方形の平面で18畳の大きさの大空間で食事・団らん・接客・子どもの勉強などの生活がここで展開される。近所の子どもが大勢来てたりもするがそんな時でも結構ゆとりがある。2つの置き家具はオリジナル。

9.広間(2)

左の奥にある2枚の大型引分戸(デザインは外観に合わせてある)の向こう側がキッチン。その上方に見えているのがトップライトからの光で明るくなっている障子。この障子は開閉でき上部に換気扇が仕込まれている。大きなテーブルと2色の椅子と前写真の白いソファはご主人のセレクト。

10.広間(3)

広間は落ち着いた木質空間。壁の仕上げはシナベニヤを30cm幅に挽いて張ったもの。ご主人がスモーカーなのもこの仕上げを選んだ理由の一つ。天井は梁の下半分くらいが見えている状態で少し赤っぽく染色して塗装した。床のフローリングも無塗装のものを張り、現地で色を合わせて塗装を施した。

11.オリジナル照明

オリジナルの照明はネパールの紙を輸入紙専門の店で探してきて制作した。和紙と違いとってもしっかりとした紙でした。透光率が少し悪かったのが不満、以降新しい製作法をいろいろと試してみるきっかけになった。

12.2階テラスから「離れ」を見る

この住宅の全体構成は1階に個室群があり、階段を上がって直ぐに広間、広間の先にここに見えるテラスがあり、その先に離れがあるというもの。そのテラスから離れを見た様子。2階テラスは屋根が完全に掛かった空間で両サイドが開放されている。外部空間ではあるけれど室内の延長のような場所。広間(キッチン)の補完の役割もあるし洗濯を干したりもする。入口上には前住居にあったレトロな照明器具。

13.離れ

離れは4畳半の空間。押入と床の間にあたる部分を写真のように区分したデザインにした。床の間上の奥には窓がある。「離れ」は「母屋」から一旦テラスを通って入るとても静かな空間。住宅内に離れを組み込むことで奥行きのある構成にもなった。奥行き感は住宅ではとても大事な要素だと思う。

14.玄関の照明

玄関の照明も制作した。電球を台に付けて、その前に和紙を吊すシンプルなもの。

13.和室

1階にある4畳の和室。小さな和室なので浅い板敷き部分を床の間に見立て、縁なし畳を敷き、障子の桟を細かくすることで、落ち着いた感じに仕上げた。