東京文京区・S邸

1.敷地

家業の仕事を続けながら、夫婦が都心に住み続けようと決心しての建て替えとなった。
都心には間口の小さな敷地が多い。ここも間口が小さく奥行きがある16坪の狭小敷地。大通りには面しているが両側は高いビルになっていてしかも完全な西向き。防火地域でもあるので耐火構造としなければならない。
敷地と空間の有効活用、環境のコントロール、バリアフリーが重要なテーマとなった。

2.外観CG

数回にわたる提案・修正を経てプランはほぼまとまり、CGにより様々な外観が検討された。

地上3階建て+塔屋、重量鉄骨工法の耐火住宅
建蔽率はほぼ敷地一杯で延べ床は約45坪。

ホームエレベーターと組み合わせて、3階をリビングにしてあるのが最大の特徴。前面はブラインドシャッターを組み込み日射をコントロール。

3.外観の合成

大通りに面してどうしても汚れやすいので前面外壁は大型タイル張りということにした。

外観を合成して街並みに対して、色などのシュミレーションをする。

4.着工&基礎工事

耐火構造にしなければならないので通常はコンクリート構造か重量鉄骨構造が選択される。3階建ては地盤との関係が微妙で判断が難しい。コストを考え杭工事が必要なくて済みそうな重量鉄骨とした。

基礎には鉄骨の柱脚を強固に固めるためのアンカーがセットされる。

5.鉄骨の建て方

重量鉄骨で部材の数は少ないので、クレーンを使って一気に鉄骨を組み立てる。

6.鉄骨組み立て

奥行きが大きく間口が狭い。おまけに途中から間口が広くなるということで、設計段階で施工計画も念頭に置く必要がある。

鳶さんの活躍で慎重に施工が進められてゆく。

7.床

重量鉄骨造の床はデッキプレートと呼ばれる波形の鉄板にコンクリートを流し込んで一体化させる工法が一般的。

8.外壁

外壁は押し出し成形セメント版を使用。ALCのように外壁に塗装が要らない。密集地で外部に足場を建てることもできないところがあるための選択。

左側が鉄骨の柱、この後に耐火被覆工事を行い耐火建築となる。

開口部は小型の鉄骨で枠がつくられ取り付ける。

9.完成外観

完成した住宅の外観。
白とブルーを基調にして明るい感じのイメージが実現された。

10.外壁部分

道路面の外壁には波模様のある大形のタイルをきっちりと割り付けたシャープな構成。タイルの色はブルーが選定された。

大きな道路で外部の汚れ対策も考慮した。

11.ブラインドシャッター

二階と三階の外部バルコニーの外側にはブラインドシャッターを組み込む。写真は降ろしたところ。羽根を閉じて完全に閉鎖することもできる。

12.三階の広間

生活の中心は三階にある広間。道路側から和室・ダイニング・キッチンが並んだ構成。ダイニングの上部に大型のトップライトがあり上部から採光がとれるのが3階に広間を持ってきた効果。ホームエレベーター無しには実現できないプラン。

13.キッチンとホームエレベーター

広間の反対側を見る。右側にあるのがホームエレベーターの扉。ホームエレベーターは1階から3階を経て屋上まで行ける。トップライトがあるので奥まで明るい空間が実現できた。

14.オリジナル照明

トップライトを見上げたところ。ビルの谷間に青空が見える。谷間のため直射日光は入らない代わりに夏場の遮光対策は必要なかった。

照明器具は和紙を用いた設計者自作のもの。大型で調光可能な仕様になっている。

15.和室

和室。外部のブラインドシャッターを降ろしたところ。西日対策の効果が表れている。

ブラインドシャッターは電動で上げ下ろしと開閉ができる。西日・プライバシー・通風を総合的にコントロールできる。