vol. 0 連載開始にあたって

建築分野では原点と言われつつ、実際には付け足しのように扱われている「住宅」についてあらゆる角度から取り組むことを目標としてこの研究所をスタートして以来、10年近くが経過しようとしています。この間、高齢者住宅、情報化住宅、住宅ストレスの研究、新エネルギーシステム、住宅部品開発、東京の住環境研究、環境共生住宅、など新しい住宅の諸課題に取り組んできました。その中心には一貫して「日本の住宅はどこからきて、どこへゆくのか、またゆくべきなのか」というテーマが念頭にあります。
「住宅進化論」とは元々1996年の1月に新宿OZONEリビングデザインギャラリーにおいて個展を開催するにあたってそのタイトルとして考えたもので、前述の少し大げさな目標を表現したものです。この展覧会では模型・写真・作品などの展示をおこない6日間の会期中に1000人を越える方々に見ていただきました。展覧会の開催には多くの時間とエネルギーがかかります。遠くの方に来てもらうのは大変です。そこでこのたび新たにホームページを利用して息長くこの問題に取り組むこととしました。ちなみに最近ある大手住宅メーカーが新聞の1面広告でたびたび「発表・木造住宅進化論」というキャッチコピーを大きく載せていますが、何の関係もありません。またこのホームページのタイトル「日本の住宅・新世紀」は住宅研究家・藤井厚二氏の昭和3年刊の主著「日本の住宅」にちなんでいます。

住宅進化論展より

この連載では今までの成果や新しい提案などを順次発表します。内容はもちろん総てオリジナルなものです。どちらかといえば専門家向けの連載ですが、一般の方でも分かり易くまた興味を持っていただけるように工夫するつもりです。皆様にご意見をいただき、さらに完成度の高いものになればと思っています。
形式は1〜2ヶ月に一回、新しい内容を発表するつもりです。現在考えている内容は
 ・現代住宅の10原則について
 ・現代住宅のルーツ探しと定義
 ・住宅情報化の未来像
 ・可動住空間について
 ・エネルギーとバイオシステム
 ・近未来生活創造館Eキューブについて
 ・家族の未来と住宅の未来
 ・ストレスレス住宅について
などです。掲載順は不確定です。vol.1は1997年8月に掲載します。どうぞよろしく。